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梶井基次郎「城のある町にて」

今、空は悲しいまで晴れていた。
そしてその下に町は甍(いらか)を並べていた。

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独自の視点と詩的文体が特異な存在感を醸しだす近代の作家、梶井基次郎といえば「檸檬」があまりにも有名ですが、その代表作の1つ「城のある町にて」は松坂城跡が舞台になっています。梶井のお姉さんが松阪・殿町に住んでおり、自身の静養の為大正13年(1924)の夏にこの地を訪れた際、梶井はたびたび松坂城跡に立ち松阪の町並みを眺めていたそうです。

今も御城番屋敷の近くにそのお姉さんの住まいが残っています。(公開はされていません。)

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実は八千代は創業当時松坂城跡で営業しておりました。大正9年が始まりです。残念ながら「城のある町」に描かれた風景の中には八千代はでてきません。しかし、梶井の創作ノートの中に名前がでてきます。面白いのでご紹介しますね。

八千代の所へ上がって来て、大きな藤の棚があり[<そこ>]街を見晴らした庭がある、これを自分は「こゝの庭ですか」ときいたら、「ちがひます」と兄答え、而も私はそこへゆくのが心栄えしなかった。Yだったら、こんな八千代はとり拂ってしまへといふだらう、と思った(後で)、
その代り彼がこゝの亭主だったら、庭でやかましく云ふ小供を追拂ひかねないと思った、一こんなことがあった、

松坂城跡の野外音楽堂の前に立派な藤棚があります。八千代はちょうどその辺りにありました。藤棚を見るに八千代が邪魔だ、しかし八千代の主人から見たら軒先でそう云う子供が邪魔だろう。なんと皮肉でユーモラスな眼差しではありませんか。

十代のころ読んだ梶井基次郎、まさか自分がその「城のある町」に嫁ぐとは思ってもみませんでした。松坂城跡にはその梶井の文学碑と(何故か)檸檬の木が植えられています。在りし日の文学少年・少女になって文庫本を片手に松阪の町並みを見下ろすのもいいかもしれません。

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